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■ 無能の人・日の戯れ(つげ義春)

無能の人・日の戯れ(つげ義春)

つげ義春は昭和12年、東京葛飾区生まれ、小学校卒業と同時に、兄の勤め先のメッキ工場に見習工として就職する。マンガ家を志し、わずか16歳でデビューする。雑誌「ガロ」に「沼」「チーコ」などの作品を発表して注目を集めた。
「無能の人」は漫画家として行き詰まった主人公が、ろくに働かず、稼ぎもなく、妻子にさえ罵られ、奇想天外な空想に耽りながら日々を過ごしている。
竹中直人の監督、主演で、モノクロ映画になった「無能の人」は、他人からはろくでなしにしか見えない主人公が、多摩川で拾った石を河川敷に建てたオンボロ小屋で売るという設定である。
昭和40年頃、「石は金になる」という水石ブームから時代性が見て取れる。当時のボーリングブーム然り、昭和の匂いがプンプン漂っていた。日本列島改造、バブル崩壊へと突っ走る時代である。