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■ 「豊饒の海」全四巻。「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」(新潮社)

三島由紀夫は数多い日本の作家の中で、私が最も影響を受けた作家である。20代の頃、三島作品を読破して、もう読むものがない?という時、最後に残して置いたのが、遺作となった「豊饒の海」だった。しかし、当時はまだ若い自分にはこの小説を読みこなす力がなく、勿体ないと思い、40代まで読まなかった。
「豊饒の海」全四巻は各巻ごとに時代と背景と環境の異なる独立した物語として完結しながら、それぞれの主人公が歴史の流れとともに、輪廻・転生の不可思議な縁で繋がるという、近代文学史上かってない新しい文学的構成を試みた著者畢生の大長編である。
やはり、20代で読まず、40代で読んだのは正解であったと思う。今は70代である。再読したら、どの様な感動を得られるのだろう…?