上・ 樽見京一郎は京都の僻村に生まれた。父と早く死に別れて母と二人、貧困のどん底であえぎながら必死で這い上がってきた男だ。その彼が、食品会社の社長となり、教育委員まで務める社会的名士に成り上がるためには、いくつかの残虐な殺人を犯さねばならなかった。そして、功なり名を遂げた時、殺人犯、犬飼多吉の時代に馴染んだ酌婦、杉戸八重との運命的な出会いが待っていた…。
下・ 波濤荒れ狂う荒涼とした海峡で発生した殺人事件を執拗に追い続けた、函館署の弓坂吉太郎。そして10年の後、杉戸八重殺害犯の捜査にあたることになった舞鶴東署の味村時雄。両刑事の執念が実を結んだ時、謎の人物、犬飼多吉こと樽見京一郎の実像が浮かび上がる…。青函連絡船、洞爺丸沈没の海難事故に想を得て、雄大な構想で人間の宿命を描き切った長編ミステリー小説。 私の大好きな俳優、三國連太郎主演の映画も非常に面白くて、素晴らしかった。
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