戻る
■ 漂流(吉村 昭)新潮文庫

漂流(吉村 昭)

吉村昭の小説は特に凄く感動し、いつまでも記憶に残るという作品があるわけではないが、それぞれの作品群が緻密な資料だけに頼らず、念入りな取材に基づいて構成され制作されているので、どの小説も重厚な読後感が残る。
私はどちらかと言えば純文学が好きで、あまり歴史小説が好きではない。食わず嫌いとも言えるが、吉村作品であれば何故か?すんなりと入っていけそうな気がする。
「戦艦武蔵」「高熱隧道」「破船」「熊」など、数多くの吉村作品を上げればきりがない。
「漂流」は江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次々と倒れて行ったが、土佐の船乗り長平はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。
その生存の秘密と、壮絶な生き様を巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、長編ドキュメンタリー小説。