戻る
■ 輝ける闇(開高 健) 新潮文庫

輝ける闇(開高 健) 

銃声が止んだ……虫が鳴く、サルが叫ぶ、黄昏のベトナムの森。その叫喚のなかで人はひっそり死んでゆく。誰も殺せず、誰も救えず、誰のためでもない、空と土の間を漂うしかない焦燥のリズムが亜熱帯アジアの匂いと響きと色のなかに漂う。
孤独・不安・疲労・死……ベトナムの戦いを肌で感じた著者が、生の異相を果敢に凝視し、戦争の絶望と醜さをえぐり出した長編である。
やはりベトナム戦争を題材にした純文学長編「夏の闇」と共に、ロシアとウクライナの悲惨で無意味な戦争が続く現在、戦争というものを熟慮するという意味でも是非とも読んで貰いたい小説である。
私にとって開高健という作家は、釣りという趣味の共通点があり、数多くの釣りに関する本も読破しました。また彼のベトナム戦争時の命がけのルポルタージュ的な体験は、若い頃、ルポライターを目指したことがある私にとって意味深く、憧れの大好きな作家でした。